「900円のラーメン、原価は300円」——だから僕は、ネギを左上に置く
2026-08-07

今日は、あまり表に出ない話をします。原価の話です。
経営者だけが知ってる世界の話なので、たぶん面白いですよ。
900円のラーメン、原価はいくらか
うちのラーメンは、今900円くらいです。
じゃあ、その一杯を作るのに、材料費はいくらかかってるか。
——約300円です。
割合でいうと、30%。びっくりしました?「意外と高い」と思った人と、「意外と安い」と思った人、両方いると思います。
ちなみに今、材料費がものすごく上がってます。だから35%以内に収まっていれば、けっこういいほうって言われてるのが現状です。
うちは、31%です。 まあ、いいほうと言っていいと思います。
なんで31%でやれてるか
理由のひとつは、はっきりしてます。
うちは、醤油ラーメン一本なんです。
味噌、塩、つけ麺、混ぜそば、夏の冷やし中華——一切、やってません。 醤油オンリーです。
これをやると、何がいいか。余分な材料が出ないんですよ。 そして、廃棄が出ない。
メニューを増やすと、その分だけ材料の種類が増えます。で、そんなに出ないメニューの材料が、冷蔵庫の中でじわじわ古くなって、最後は捨てることになる。捨てた材料の代金は、全部そのまま原価に乗るんですよ。
——この「醤油一本」の戦略の話は、また今度たっぷり書きます。今日は原価の話に戻りますね。
トッピングの原価を、ばらしてみます
じゃあ、トッピングはどうか。
チャーシュー、メンマ、ほうれん草、味玉。——このあたりは、だいたい25〜30%くらいです。ラーメン本体とそんなに変わりません。
具体的に言うと、味玉は120円でお出ししてますが、原価は30円くらい。
「え、4倍じゃん」って思いました?でもね、この30円には、茹でて、殻をむいて、タレに漬けて、味を入れるっていう仕込みの手間が乗ってないんですよ。人件費を入れたら、そんなにおいしい話じゃないんです。
……と、ここまでは、まあ普通の話です。

ところが、ネギだけは別次元なんです
ネギの話をさせてください。
うちはネギを、5キロ単位で仕入れます。今の相場で、5キロで2000円くらい。
これを一杯分に割ると——だいたい5円くらいなんですよ。
5円。
もちろん、切る手間はかかります。でも材料費だけで見たら、他のトッピングとは桁が違うんです。
だから、左上に置くんです
前に、券売機のボタンの話を書きました。「Zの法則」で、一番最初に見られる左上に、一番買ってほしいものを置く、という話です。
じゃあ、うちのトッピング欄の左上には何があるか。
——ネギです。
もう、お分かりですよね。ネギを一番買ってほしいから、一番いい場所に置いてるんです。
これ、ちょっとズルいと思います?でも僕は、そうは思ってないんですよ。だってネギって、入れると本当においしくなるんですから。シャキッとした食感と香りが、醤油スープにものすごく合う。
お店が儲かって、お客さんもおいしい。 両方成立してるから、堂々と左上に置いてます。もしネギがまずかったら、いくら原価が安くても、絶対に推しません。
ちなみに、ネギを切る機械の話
ネギの話ついでに、もうひとつ。
うちのネギ、手切りじゃないんですよ。ネギ切り機を使ってます。「DX-50」っていうやつです。
これがね、10年前は5万円くらいで買えたんです。それが今は——10万円くらいします。
倍ですよ、倍。インフレ、すごくないですか?
こういうところにも、しっかり効いてきてるんですよね。材料費が上がって、機械も上がって。それでも原価率を31%に抑えるって、けっこう必死な作業なんです。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「原価率だけ見てても意味ないでしょう。人件費と家賃を入れないと」
——これは、まったくそのとおりです。
飲食店の世界では、FLコストっていう見方があります。F(食材)とL(人件費)を足したもの。ここに家賃を足して、はじめて「儲かってるかどうか」が見えます。原価率31%だけを自慢しても、人件費がめちゃくちゃかかってたら、意味がないんですよ。
だから僕は、原価率は**「材料の使い方が下手になってないか」を見るための数字**だと思ってます。それ以上でも、それ以下でもない。
「原価が安いものを推すって、お客さん本位じゃないのでは?」
——気持ちは分かります。でもさっき書いたとおり、まずいものは推しません。
順番が逆なんですよ。「安いから推す」んじゃなくて、「おいしくて、しかも安いから推す」。この2つが揃ったものだけが、左上に置かれます。片方でも欠けたら、そこには置きません。

数字を知らないと、値段は決められない
最後に、まとめます。
原価の話って、地味なんですけど——これを知らないと、値段が決められないんですよ。
前に「値上げが怖かった」って記事を書きました。あのとき僕が最後に踏み切れたのは、数字を知ってたからなんです。今の原価がいくらで、上げるとどうなるか。それが見えてれば、怖くても、判断はできる。
勘で値段をつけるのが、いちばん怖いんです。
だから今日は、この地味な話を書きました。