「左上に、何を置くか」——券売機のボタンを並べ替えたら、売上が変わった話
2026-08-01

今日は、ちょっと実務的な話をします。うちの店の券売機の話です。
券売機って、ボタンがずらっと並んでるだけの機械に見えますよね。でもあれ、お店の戦略が、そのまま形になったものなんですよ。今日はそれを、僕の失敗込みで書きます。
最初、僕は「安い順」に並べてました
開店したとき、僕は何も考えずに——いや、考えてはいたんですけど、こう並べてたんです。
左上が、一番安いやつ。 その右が中くらい。一番右が、一番高いやつ。
きれいに、値段の安い順。「わかりやすくていいだろう」と思ってました。今考えると当たり前に分かることなんですけど、当時の僕は、本当に知らなかったんですよ。
「Zの法則」というものがあるらしい
あるとき知ったんです。Zの法則っていうのがある、と。
人が広告とか新聞とかを見るとき、視線は「Z」を書くように動くんだそうです。まず左上を見て、そこから右へスーッと流れて、次に左下へ落ちて、また右へスーッと。アルファベットのZですね。
で、大事なのはここ。一番最初に目に入る左上が、一番選ばれる確率が高いんです。
……それを知った瞬間、青ざめましたよね。
だって僕、その一等地に、一番安いやつを置いてたんですから。お店で一番いい場所を、一番利益の少ない商品に、タダで貸してたようなものです。
左上に、何を置くか
じゃあ、左上に何を置くか。答えはシンプルで、一番買ってほしいものを置くんです。
僕が最初に置いたのは、ラーメンと味玉のセット商品でした。
それまでは、ラーメンはラーメン、味玉は味玉で、別々のボタンだったんです。トッピングしたい人が、ボタンを2回押す形。それを、最初からセットになったひとつのボタンにして、左上に置いた。

貼り替えた日、ドキドキが止まらなかった
正直に言うとね。あのボタンを貼り替えた日、僕、めちゃくちゃドキドキしてたんですよ。
どうなるんだろう。出るかな。出ないのかな。——一日中、券売機のほうが気になって仕方ない。お客さんが食券を買うたびに、厨房からチラチラ見てました(笑)。
で、出たんですよ。
味玉のセットの食券が、続けて出た瞬間があってね。あのとき——
「うわ、きた。俺の戦略、ばちっとハマった」
って思いましたもん。心の中でガッツポーズですよ。
……まあ、戦略って言っても、もともとある法則を、僕が知らなかっただけなんですけどね(笑)。世の中の人はとっくに知ってる話です。でも、自分で試して、自分の店で結果が出た瞬間の嬉しさは、また別物なんですよ。
数字で言うと
具体的な数字で言うとね。
それまで味玉が100個出てたとしたら、それが120個になった。2割増しです。
ボタンを並べ替えただけです。味も、値段も、何も変えてない。ただ、置き場所と、見せ方を変えただけ。
「あ、俺、結果出せるんだ」
この2割増しでね、僕の中で何かが変わったんですよ。
**「あ、俺、こういうので結果出せるんだ」**って。
味を良くするとか、接客を良くするとか、そういう「頑張って良くする」以外にも、考えて仕組みを変えると、数字が動くっていう感覚。これを知ったのは、大きかったです。
で、味をしめまして(笑)。次はラーメンとご飯物のセットを作りました。ミニ丼とのセットですね。これも同じで、それまで別々に押してもらってたものを、ひとつのボタンにして、いい場所に置いた。
これも、ちゃんと出る率が上がりました。
で、その先に何があったか
券売機のボタンを並べ替えて、セットを作って、売上が上がって——それで、何をしたか。
スタッフの時給を上げました。 そして、自分の手取りも増えました。
前の記事で「価値は勝手には上がらない、自分で上げるしかない」って書きましたよね。値上げも、その手段のひとつです。でも、値上げだけが手段じゃない。
ボタンを並べ替えるのだって、価値の上げ方なんですよ。 お客さんには「値段が上がった」という負担をかけずに、店の売上を増やして、それをスタッフに配れた。これ、けっこう気持ちのいいやり方だと思ってます。

券売機は、無言の店員です
まとめると、こういうことなんだと思うんですよ。
券売機って、ただの機械じゃなくて——何も言わないけど、確実にお客さんに提案してる店員なんです。並べ方ひとつで「今日はこれ、いかがですか」って言ってるのと同じ。
僕は最初、その店員に「一番安いやつを、まずおすすめしといて」って言わせてたわけです。もったいない話ですよね。
これ、券売機のない業態でも、たぶん同じです。メニュー表のどこに何を書くか。棚のどの高さに何を置くか。ホームページのどこにボタンを置くか。——一番見られる場所に、一番売りたいものが置いてあるか。
たったこれだけの問いなんですけど、答えられてないお店、けっこうあると思うんですよ。少なくとも、開店したての僕は、答えられてませんでした。