「新人だったら、辞めてもらってます」——いちばん貢献してくれる子に、いちばん厳しいことを言った日

事務スペースの机に立てられたカレンダー。ある日付に赤い丸がついている

今日は、心の中で、ずっとせめぎ合いながら書きます。

すごく、貢献してくれる子なんです

うちに、学生のスタッフがいます。

この子がね、本当にお店に貢献してくれるんですよ。

たとえば、シフトが埋まらない日があって、「協力お願いします」ってみんなに声をかけるじゃないですか。正直、あんまり反応って無いんですよ(笑)。みんな忙しいですからね。

でも、その子は違うんです。自分から連絡をくれる。「何時からだったら入れます」って。頼まれたからじゃなくて、自分から。

前に「自分から声をかけられる人はすごい」って書きましたけど、まさにそれを、いつもやってくれてる子なんです。ありがたい存在ですよ、本当に。

その子が、たまにやっちゃうこと

ただね。その子が、たまにやっちゃうことがあるんです。

シフトの提出締切を、過ぎる。

30分とか、たまに遅れるんですよ。他のみんなは、守ってる。その子だけ、たまに過ぎる。

一回目、二回目までは、軽く伝えるくらいにしてました。でも——三回目。

このときは、強く注意しました。「ちゃんとやらなきゃダメですよ。みんな守ってるんだから」って。出勤してきたときに、まず注意して。上がり際にも、もう一回。その日、二回言いました。

僕の中の、せめぎ合い

正直に書きますね。

僕、ルールを守れない人が、苦手なんです。 これはもう、はっきりしてる。このブログを読んでくれてる方なら、分かりますよね(笑)。

でも一方で——この子は、お店のためにちゃんと動いてくれてる。貢献してくれてる。だから、守ってあげたい。

この2つが、僕の中で、ずっとせめぎ合うんですよ。

苦手なタイプの行動を、大好きなタイプの子がする。——これ、経営やってて、いちばん心が揺れるパターンです。

閉店後の店内で、カウンターの前に立って話す、店主と若いスタッフの後ろ姿

彼女に、伝えたこと

で、僕が伝えたのは、こういうことでした。

まず、厳しいほうから。

「もし新人だったら、私はあなたに、退職してもらってます」

きつい言葉です。分かってて、言いました。それくらい、締切を破るって重いことなんだと、伝えたかったから。

これ、理屈を説明するとこうなんです。新人っていうのは、まだ信頼の貯金がゼロなんですよ。貯金がない状態で、同じミスを何回も繰り返したら——そりゃ、切られます。引き出す残高が、ないんだから。

でも、この子は違う。お店への貢献で、たくさんの信頼を積み立ててくれてる。 だから、同じミスをしても、関係が保ててるんです。

はっきり書いておきますけど、僕はこの子に辞めてもらうことなんて、まったく考えてません。 あの言葉は「クビにするぞ」って脅しじゃなくて、「あなたが今もここにいられるのは、あなた自身が積み上げた信頼のおかげなんだよ」っていう、種明かしなんです。

そのうえで、続けました。

「でも、あなたはお店のために、積極的に貢献してくれてる。だから、できれば守りたい。本当は、プラスアルファでボーナスを出したり、お小遣いをあげたりしたいくらいなんだ。だけど、ミスがあると、みんなの手前、こうやって注意しなきゃいけなくなる。 だから——注意する側の気持ちも、ちゃんと考えてほしいんだよね」

なんで「みんなの手前」が大事なのか

ここ、ちょっと補足させてください。

貢献してくれてる子だから、締切くらい見逃してあげればいいじゃないか——って思う人も、いるかもしれません。

でも、それをやったらね。他のスタッフから見たら、「えこひいき」なんですよ。

みんな、締切を守ってるんです。守ってる人たちの目の前で、破った人が何も言われなかったら、「守るだけ損」になっちゃう。ルールっていうのは、全員のものなので。

この前、「こっそり早上がりさせた」って記事を書きましたけど(笑)、あれと今回は、実は同じ原則なんです。表のルールは、全員に公平に。個別の想いは、こっそり、別の形で。 表と裏を逆にしたら、店は壊れます。

だから、想いがどうであれ、注意は省略できないんです。

時間を守るのは、信頼を守ること

最後に、僕がいちばん伝えたかったことを書きます。

その子はまだ学生で、これから社会に出ていきます。だから、これだけは持っていってほしいんですよ。

時間を守るっていうのは、信頼を守ることと、同じなんです。

締切を30分過ぎる。たいしたことないように見えますよね。でも、あれって「あなたとの約束を、30分ぶん軽く見ました」っていう合図として、相手に届いちゃうんですよ。本人にその気がなくても、です。

そして、信頼ってね——一度失うと、本当に、なかなか回復しないんです。

僕はこれまで、時間にルーズで、少しずつ少しずつ信頼を失っていく人を、たくさん見てきました。本人は気づかないんですよ。周りが静かに、頼まなくなっていくだけだから。

彼女には、そうなってほしくない。

朝の光の中、駅に向かって歩いていく学生の後ろ姿

——だから、言いました。厳しく聞こえたと思います。でも、あれはね、嫌いだから言ったんじゃないんです。むしろ、逆なんですよ。

どうでもいい人には、僕はもう、注意しません。それは前に書いたとおりです。三回目でも本気で注意するのは、この子の五年後、十年後に、ちゃんと期待してるからなんです。