売上は「客数×客単価」——たった10円の、パンチ力の話

木のカウンターに置かれた一枚の銅貨。奥に湯気の立つラーメンがぼけて見える

今日は、僕が毎日見てる数字の話をします。

難しい話はしません。というか、掛け算ひとつしか出てきません。でもこの掛け算、僕の商売の全部が乗っかってるんですよ。

売上 = 客数 × 客単価

まず、毎日見るのは売上です。今日一日、どれだけ売ったか。これは当然見ますよね。

で、その売上って、分解するとこうなります。

売上 = 客数 × 客単価

今日何人来てくれたか、掛ける、ひとりあたりいくら使ってくれたか。これだけです。

売上を上げたければ、やることは2つしかない。客数を増やすか、客単価を上げるか。 世の中のどんな商売も、突き詰めればこの2つです。

ところが、客数って、実は動かしにくいんです

「じゃあお客さんを増やそう」って、誰でも思いますよね。僕も思いました。

でもね、やってみると分かるんですけど——客数って、実はあんまり動かないんですよ。

考えてみてください。営業時間は決まってます。席の数も決まってます。うちみたいな店だと、平日は何人くらい、土日は何人くらいって、だいたい平均が見えてくるんです。

そこから一気にドカンと増えることって、まあ、ないんですよ。テレビで紹介でもされない限り(笑)。漫画みたいな展開は、現実には起きない。

客数は、じわじわとしか増えない。コントロールしにくい数字なんです。

だから、客単価を見るんです

じゃあ、もう片方はどうか。

うちの店には、月に3000人くらいのお客さんが来てくれます。

ここで、ちょっと計算してみてほしいんですよ。

客単価が、たった10円上がったら、どうなるか。

10円 × 3000人 = 月3万円です。

……でかくないですか?たった10円ですよ。 缶ジュースも買えない10円が、月に3000人分積み重なると、3万円のパンチ力になる。

僕はこれを、**「10円のパンチ力」**って呼んでます。

銅色の硬貨が、手前から奥へ、階段のように積み上がっている

50円値上げの、本当の意味

前に、50円の値上げが怖かったって記事を書きました。

あの50円を、この掛け算に入れてみてください。

50円 × 3000人 = 月15万円です。

たった50円の値上げが、月に15万円の売上アップになるんですよ。バカにできないでしょ。

月15万あったら、何ができるか。スタッフの時給を上げられます。 自分の手取りも増やせます。前に「厳しさの回収先はスタッフの給料」って書きましたけど、その原資はこうやって、10円と50円の積み重ねから生まれてるんです。

そして、ここが大事なんですけど——だからこそ、品質は絶対に保たなきゃいけないんですよ。

10円のパンチ力は、お客さんが「この一杯なら、この値段で当然」って思ってくれてる限りで成立する話です。品質が落ちたら、客単価どころか、客数のほうがゴソッと減る。掛け算の両方が崩れる。数字を追えば追うほど、結局「一杯をちゃんと作る」に戻ってくるんですよね。

値上げだけが、客単価を上げる方法じゃない

で、ここからが、この記事でいちばん言いたいことです。

客単価を上げる方法は、値上げだけじゃないんですよ。

「見せ方」で上げる方法があるんです。

覚えてますかね、券売機の話。僕はラーメンと味玉のセットボタンを作って、券売機の左上に置きました。そしたら味玉の出数が2割増えた——あの話です。

あれ、実はこの掛け算の話だったんですよ。値段はひとつも上げてない。 でも、セットを選んでくれる人が増えたぶん、ひとりあたりの使う金額——つまり客単価が上がった。お客さんは「おいしい組み合わせを選びやすくなった」だけ。誰も損してない。

客数は増やしにくい。値上げは何度もできない。でも「見せ方」は、明日から変えられる。 ここが、いちばん動かしやすいレバーなんです。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「客単価を上げるって、要するにお客さんからもっと取ろうって発想ですよね?」

——言葉だけ見ると、そう見えますよね。でも僕は、順番を決めてます。

お客さんの満足が上がる形でしか、客単価は上げない。

ネギのセットを推すのは、入れたほうがおいしいからです。値上げをしたら、その分は品質と給料で返す。「満足はそのままで、取る額だけ増やす」をやり始めたら、お客さんは静かに離れていって、掛け算の「客数」のほうが崩れます。短期で取って長期で失う。いちばんダメなやつです。

「客数を増やす努力は、しないんですか?」

してますよ(笑)。ガソリンはわざわざ人のいるスタンドで入れてるし、飯は知り合いの店で食べてるし。ただ、あれはじわじわ効く長期の種まきなんです。

数字っていうのは、動かせるものから動かすのが基本で。客数は長期でじわじわ、客単価は工夫で今日から。両方やるけど、毎日見るのは客単価のほう——そういう役割分担です。

券売機の投入口に、硬貨を入れようとする手元

掛け算ひとつで、店の見え方が変わる

まとめます。

売上 = 客数 × 客単価。

たったこれだけの式ですけど、これを知ってから、僕の店の見え方は変わりました。

「今日は暇だったなあ」で終わるんじゃなくて、「客数はいつも通り、でも客単価がちょっと低い。セットが出てないな。なんでだろう」って考えられる。数字は、落ち込むためじゃなくて、次の一手を考えるためにあるんですよ。

10円のパンチ力、あなたの商売でも、ぜひ計算してみてください。