「すいません、寝てました」——僕の対応を決めるのは、相手の反応です

厨房の壁に掛かった時計。針は11時半すぎを指している

今日、こんなことがありました。

11時半から出勤予定のスタッフがいたんです。でも、11時半になっても来ない。

「あれ?来ないな。どうしたんだろう」って。しかも今日に限って、忙しいんですよ。人がひとり足りないと、店は普通にキツい。

で、隙間時間を縫って、連絡しました。数分後、LINEがピコンと鳴って——

「すいません、寝てました。今すぐ向かいます」

で、20分か30分くらいして、来ました。

さて、僕はどうしたか

ここでね、経営者やリーダーの方に聞いてみたいんです。あなたなら、どうしますか?

ガツンといくか。「まあまあ、気をつけてね」で済ませるか。

僕の答えは、こうです。

——相手の反応によって、決める。

決めてから会うんじゃないんです。相手の出方を見てから、こっちの出方を決める。 これが僕のやり方です。

その子は、どう来たか

その子はね、来るなり「すいません!」って、しっかり頭を下げてきたんですよ。

そして——ここが大事なんですけど——一緒に働いてたスタッフにも、ちゃんと謝る姿勢を見せた。

僕、この2つ目を見てるんです。というのも、遅刻でいちばん迷惑をかけたのって、実は僕じゃないんですよ。その時間、ひとり少ない状態で必死に回してた、隣のスタッフなんです。そこに頭を下げられるかどうか。ここに、その人の中身が出る。

で、ちゃんとできてた。だから僕は、それで許しました。「気をつけろよ」って、それだけです。

ひとつだけ、追加で言いました。

**「帰り際にも、もう一回ちゃんと謝りなさいよ」**って。

で、その子は帰り際に、僕にも、一緒に働いたスタッフにも、ちゃんと言ってました。「すみませんでした。気をつけます」って。

店内で深く頭を下げる、エプロン姿のスタッフの後ろ姿

そこから、笑いに変えた

帰るときにね、その子が「気をつけますんで」って言ったんですよ。だいぶ反省してる様子でした。

だから僕は、ちょっと間ができたタイミングで、こう言いました。

「いやー、疲れたな。今日は人数ひとり少なかったからな。足パンパンだよ。肩、揉んでほしいよなあ」

ちょっと笑いに変えたんです。

で、最初からいたスタッフにも「ね、疲れたでしょ」って振って。「はい、疲れました」って言うから、「俺もね、めっちゃ疲れたよ」って。ちょっといじって、もう一回、笑いが生まれる感じにしました。

なんで笑いに変えたのか

これね、誰にでもやるわけじゃないんですよ。

その子が、ちゃんと本気で謝ってきたからです。頭を下げて、隣のスタッフにも謝って、帰り際にもまた言って。そこまでやった人には、重い空気を引きずらせる必要がないんですよ。

反省は、もう十分してる。これ以上、こっちが黙って不機嫌にしてたら、それはただの罰です。罰を与えたいわけじゃないんですよ。次から遅刻しなければ、それでいい。

だから、笑いに変える。「今日は大変だったな、はい終わり」って、その日のうちに畳む。

逆に言うとね。もし「すいませーん」って軽い感じで、隣のスタッフにも何も言わないような態度だったら——僕は、笑いになんて絶対にしません。そこはきっちり言います。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、正直に書いておきます。

「相手の反応で対応を変えるなんて、不公平じゃないか」——これ、そのとおりです。

謝るのが上手い人が得をする。裏を返せば、口下手な人が損をする。この批判は、まっすぐ刺さります。

僕の答えはこうです。演技か本気かって、けっこう見えるんですよ。 感じるというか、気づくというか。「ああ、この子、本気で言ってるな」っていうのは、伝わってくる。

でもそれ以上に大きいのは、普段を見てるからなんです。

その子はね、普段から返事がしっかりしてるんですよ。頑張ってるし、手を抜かないし、サボらない。それを、ずっと見てきてる。**その積み重ねの上での「気をつけろよ」**なんです。

信用って、こういうときのためにあるんだと思います。普段ちゃんとやってる人は、一回やらかしても大丈夫。 それが、貯めておいた"信用残高"の使い道なんですよ。

「原因、何も解決してないよね?」——これは、負けました

もうひとつのツッコミ。

「遅刻の原因は寝坊なのに、対策が"気をつけます"だけ。それ、対策じゃなくて気合いだよね?」

……はい。全くそのとおりです。 ここは何も言い返せません。

本当は、仕組みで直すべきなんですよ。目覚ましを2個にするとか、前の日に確認を入れるとか。態度で解決した気になってると、また同じことが起きる。頭では分かってます。

僕はまだ、そこまでやれてません。ここは、正直に「まだできてない」と書いておきます。

「カバーしたスタッフは、どう思った?」

これも痛いところなんですけど、ひとつだけ言わせてください。

いきなり笑いにしたわけじゃないんですよ。

順番があるんです。まず、本人が最初にしっかり謝った。僕にも、カバーしてくれたスタッフにも。そして、その日の中にちゃんと反省する時間があった。みんなが「いいよ、いいよ」ってなってから——最後の、帰り際なんです。笑いに変えたのは。

つまり、笑いは、許しが成立したあとにしか置けないんですよ。順番を飛ばして最初から笑いにしたら、それはただの「なあなあ」です。カバーした人の気持ちを、店主が勝手に踏んで畳んだことになる。

そこだけは、間違えないようにしてます。

営業を終え、片付けの済んだ厨房。窓から夕方の光が差している

対応は、決めておかないほうがいい

まとめると、こういうことなんだと思います。

遅刻とか、ミスとか。そういうときの対応を、あらかじめ決めておかないほうがいいんですよ。「遅刻は一律こう」って決めちゃうと、ちゃんと謝れる人にも、そうじゃない人にも、同じ対応をすることになる。

これ、実はすごく雑なんです。ちゃんと謝れる人が損をするから。

僕はこのブログで、何度も「素直に受け取れる人が伸びる」って書いてきました。じゃあ、素直に受け取った人には、それに見合う返しをしなきゃいけないんですよ。じゃなきゃ、素直でいる意味がなくなっちゃう。

僕が見てるのは、たぶんこの3つです。

  • 態度:謝れるか。不貞腐れないか
  • 普段の仕事ぶり:信用残高が貯まっているか
  • 回数:何回も繰り返していないか

だって、1回目2回目なんて、みんな人間だからあるんですよ。 寝坊する日だってある。僕にだってあります。そこを一発で切り捨てるほど、僕は偉くない。

問題は、それが「何回も」になって、しかも「直そうとする姿勢がない」ときなんですよ。そのときだけ、話が変わる。

——結局これ、その日の遅刻を裁いてるんじゃなくて、その人と積み上げてきたもの全部で判断してるってことなんですよね。だから、普段が、いちばん大事なんです。

今日はいい反応が返ってきたので、笑いで終われました。こういう日は、店の空気が、ちょっと良くなるんですよね。