「お釣り、忘れてますよ」——今日、お店で見た、ちいさないい光景
2026-06-27

今日はね、ちょっと、いい話を書かせてください。
これまで、人を見るとか、注意するとか、わりと"厳しめ"の話ばっかり書いてきたんですけど。今日はお店で、なんだか胸があったかくなる光景を見たので、それを。
うちのお店、券売機なんですけどね。お客さんがね、券売機で食券を買ったあと、お釣りを取り忘れて、席に着いたんですよ。券売機のお釣り口に、小銭が、ちょこんと残ったまま。
そしたら、それに気づいた、別のお客さんが——「これ、忘れてますよ」って、わざわざ、声をかけてくれたんです。
で、そのお釣りが、こう、お客さんからお客さんへ、手渡しで回っていって。途中で受け取った人が、「あれ? ……これ、僕のじゃないな」って、首をかしげて(笑)。よく見たら、その人の、さらにもうひとつ前にいたお客さんのものだったんですよ。それで、ちゃんと、本当の持ち主のところに、戻っていきました。
僕、それを厨房から見てて。なんか、いいなあ、って思っちゃって。

たかが、お釣り。でもね。
金額にしたら、数百円ですよ。たぶん、忘れた本人だって、気づいてなかったかもしれない。
でもね、そこにいた人たちが、誰ひとり「自分には関係ない」って顔をしなかったんです。「これ、あの人のだ」って、ちゃんと、つないでくれた。それが、すごく、よかったんですよね。
僕、ふだんは、スタッフの返事がどうとか、容器のすすぎ方がどうとか、細かいことばっかり言ってる人間で。正直、自分でも「めんどくさい店主だなあ」って思うこと、あるんです。
でも、こういう光景を見るとね——ああ、そうだ、って、思い出すんですよ。僕が守りたかったのって、たぶん、こういう"空気"なんだって。
お店って、僕ひとりじゃ、つくれないんです
一杯のラーメンは、何人もの手でできてる——って、何回か書きました。でもね、それだけじゃ、なかったんですよね。
お店の"空気"って、来てくれるお客さんも、一緒につくってくれてるんです。今日の、あのお釣りを回してくれた人たちみたいに。
僕が厨房で、必死にスープと向き合ってる間に。気づかないところで、お客さん同士が、こんなあったかいことを、してくれてる。
——実はね、正直に言うと。**こういう"空気"のお店にしたいなあ、って、僕、ずっと思ってたんです。**お客さんが、お客さんに、自然とやさしくなれる。そういう場所。それが今日、ふっと、目の前で起きて。ああ、ちょっとだけ、近づけたのかな、って。
それを思うとね、なんか、また、がんばろうって思えるんですよ。

だから今日は、ただ、それだけの話です。
「お釣り、忘れてますよ」って言ってくれた、どこかの誰か。——ありがとうございました。また、来てくださいね。